タレントの田代まさし氏が覚醒剤関連で逮捕されたニュースを見て、
「やっぱり覚醒剤はやめられないのかもしれない」
と感じた方は少なくないと思います。
薬物に関わりのない方ほど、
「一度逮捕されたなら反省して、二度と繰り返さないのでは?」
と考えがちです。
しかし、薬物依存の現場では、“反省”や“罰”だけで再犯が止まらないケースが存在します。
この記事では、なぜ再犯が起きるのか、そして身近な人が薬物で悩んでいるときに何を整えるべきかを、分かりやすく整理します。

覚醒剤は「意志の問題」だけで説明できない
薬物依存は、単なる性格や根性の弱さでは片付けられないことがあります。
本人が「やめたい」と口にしていても、再発してしまうことがあるのが現実です。
その背景には、次のような要因が複雑に絡むケースがあります。
- 強いストレスや孤独
- 自己否定や無力感
- 生活の崩れ(仕事・人間関係・金銭)
- 依存対象に戻りやすい環境(接点・誘因)
- 支援体制の不足(相談先がない/孤立)
ここを無視して「反省しろ」「根性でやめろ」と追い込むだけでは、再発リスクが下がらない場合があります。
刑務所・隔離は「その間やらせない」ことはできても、根本解決になりにくい
現行の社会構造では、薬物事件は刑事手続きによって「社会から隔離する」形になりがちです。
確かに、隔離されている間は薬物を手に入れにくくなります。
しかし、問題は出所後です。
- 元の生活環境に戻る
- ストレスが再来する
- 孤立して相談できない
- 「どうせ自分は…」という諦めが出る
こうした状況が重なると、本人の意思とは別に、再び薬物へ引き寄せられることがあります。
つまり、隔離だけでは“再発の原因”を解消できないことがある、という点が重要です。
回復施設は「合う人には有効」だが、“施設任せ”だけでは難しいケースもある
回復支援の場(自助グループやリハビリ施設等)は、支えになることがあります。
一方で、どの支援でも共通するのは、入っただけで自動的に回復するわけではないという現実です。
支援が機能しにくくなる典型例は次の通りです。
- 本人の動機が弱い/揺れている
- 退所後の生活設計がない(住居・仕事・交友関係)
- 家族・身内が距離を置きすぎて孤立する
- 再発トリガー(誘因)が温存されたまま
施設や支援機関を否定するのではなく、「支援+生活環境の再設計」まで含めて初めて回復が安定しやすい、という考え方が現実的です。
再犯が起きる本当の分岐点は「出所後/退所後の生活」にある
再犯が続く人に共通しやすいのは、次の状態です。
- 薬物に戻りうる人間関係が残っている
- ストレスの逃がし方がない
- “やり直せる居場所”がない
- 家族が「臭いものに蓋」で関与を終えてしまう
本人の意思がどうであれ、戻る場所が同じなら結果も同じになりやすい。
ここを変えない限り、何度も同じ坂道を転げ落ちるような再発が起こり得ます。
「家族が見放す」ほど再発リスクが上がることがある
身内が限界を迎えるのは当然です。
薬物問題は、周囲の心身も削ります。
ただ、支援現場では、本人が
- 「自分は捨てられた」
- 「もう戻る場所がない」
- 「どうせ理解されない」
と感じた瞬間に、再発方向へ傾く例もあります。
重要なのは、無条件に許すことではありません。
境界線(ルール)を持ちながら、孤立させない。
このバランスが、回復の現実解になりやすい領域です。
本気で薬物離脱を目指すなら「正しい支援設計」が必要
薬物依存からの回復は、願うだけでは進みません。
必要なのは、次の3点を同時に整えることです。
- 専門的な支援への接続(医療・相談機関・回復支援)
- 環境の再設計(住居、交友関係、生活リズム、トリガー回避)
- 身内の関わり方の整理(距離の取り方、ルール、サポート体制)
弊社では、身近な方が薬物で悩んでいるご家族・パートナーの相談を受け、状況整理と支援設計の観点からご協力できる範囲をご案内しています。
「子どもが薬物をやっているかもしれない」「恋人が怪しい」「親族が再犯を繰り返す」など、不安がある方は一度ご相談ください。
※緊急性が高い場合や健康被害が疑われる場合は、医療機関・公的相談窓口への相談を優先してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 逮捕されてもまた薬物を使うのはなぜ?
依存は「罰」よりも「原因(ストレス・孤立・環境)」に影響されるケースがあり、出所後に同じ環境へ戻ると再発が起きやすくなるためです。
Q2. 本人が「やめたい」と言っているのに再発するのはなぜ?
“やめたい気持ち”があっても、衝動やトリガー、孤立、生活不安が上回ることがあります。支援と環境整備がセットで必要になる場合があります。
Q3. 家族は何をすればいい?
感情的に責め続けるより、専門支援につなげつつ「孤立させない」「生活を再設計する」「ルールを持つ」ことが現実的です。



