1. 大阪地裁で「別れさせ屋」が争点になった裁判とは
平成30年(2018年)8月29日、いわゆる「別れさせ屋」(探偵業者)と依頼者の間で、別れさせ工作の委託契約が公序良俗(民法90条)に反して無効かが争われた控訴審判決が、大阪地方裁判所で言い渡されました。※参考: Lex
結論としては、別れさせ屋(探偵業者)側の請求が認められ、依頼者側が敗訴となっています。※参考: Lex+1
2. 訴訟の構図(要約)
争いの骨子はシンプルです。
- 別れさせ屋:契約に基づき別れさせ工作を実施 → 未払いの着手金・成功報酬等の支払いを求めて提訴
- 依頼者:**「別れさせる契約は公序良俗に反するので無効」**として支払いを拒否
つまり「別れさせ工作の是非」をめぐる倫理論だけでなく、実務的には 契約代金の未払いトラブルが前面にある事件でした。 ※参考:Lex
3. 大阪地裁が「公序良俗に反しない」と判断したポイント
判決の肝は、次の整理です。
3-1. 用いられた方法が「自由意思の範囲」にとどまる
報道・解説等でも指摘されている通り、本件で問題となった方法は、少なくとも判決が前提とした範囲では 「女性工作員が男性と食事をする」等、関係者の自由意思で行われる範囲にとどまると評価され、公序良俗違反は否定されました。 Lex+1
3-2. 「別れるかどうか」は最終的に当事者の意思で決まる
交際関係の解消は、最終的には当事者の意思決定に委ねられる性質があり、裁判所もこの前提に立って、契約を直ちに無効とするほどの違法性(公序良俗違反)までは認めなかった、という読み方になります。※参考: 離婚弁護士.com
4. 「別れさせ屋」という名称が社会を騒がせた理由
この裁判が注目されたのは、支払いトラブル自体よりも、見出しとして強い 「別れさせ屋」 という言葉が前面に出たためです。
結果として「別れさせ屋=違法なのか?」という論点が一気に拡散し、SNS等でも賛否が噴き上がりました(依頼者側を批判する投稿が多かった、という文脈もこの構図の延長線上にあります)。
5. 誤解しやすい注意点:この判決=「何でも合法」ではない
5-1. 「公序良俗に反しない」と「常に適法」は別
公序良俗違反が否定されたことは大きい一方で、これをもって **別れさせ工作が無条件に“常に問題ない”**という意味にはなりません。
手段・態様が強度になるほど、別の法令(脅迫、強要、住居侵入、ストーカー規制等)に抵触する余地が現実的に高まります。※参考: 離婚弁護士.com
5-2. 既婚者(婚姻関係)が絡む案件は論点が変わる
婚姻関係がある場合、貞操義務や不貞等の論点が絡み、交際関係のケースと同じ整理にならない場面があり得ます。
したがって、依頼を受ける側が **案件選別(受任可否)**を行うことは実務上も重要になります。
6. 依頼前に必ず確認すべき「安全な業者」チェック項目
大阪地裁判決の文脈とは別に、依頼者が自衛する観点で、最低限ここは押さえるべきです。
- 探偵業届出の有無(届出番号の明示)
- 契約書・重要事項説明の整備(料金・解約・追加費用・成果定義)
- 「100%成功」「必ず別れさせる」等の断言をしない
- 違法になり得る手段を示唆しない(脅迫、強要、住居侵入、尾行の逸脱など)
- 即決を迫らない(持ち帰り検討を許容する)
まとめ|大阪地裁判決が示した実務的な意味
平成30年8月29日の大阪地裁(控訴審)判決は、少なくとも本件の態様において、別れさせ工作の委託契約が直ちに公序良俗違反で無効になるわけではない、という判断を示しました。 Lex+1
一方で、手段や対象状況によって法的評価は変わり得るため、依頼する側は「判決があるから大丈夫」と短絡せず、業者の法令遵守姿勢・契約の透明性・手段の適法性を基準に慎重に選ぶ必要があります。
よくある質問|別れさせ屋の裁判と公序良俗について
Q1.別れさせ屋は裁判で違法と判断されたことはありますか?
いいえ、少なくとも 平成30年8月29日に大阪地方裁判所で言い渡された判決では、別れさせ工作は公序良俗に反しないと判断されています。
この裁判では、別れさせ屋側の請求が認められ、成功報酬の支払いを拒否した依頼者が敗訴しています。
Q2.なぜ別れさせ工作は公序良俗に反しないと判断されたのですか?
裁判所は、別れさせ工作の方法が
- 当事者の自由な意思の範囲にとどまる
- 強制や違法行為を伴っていない
と判断しました。
「女性工作員が男性と食事をする」といった行為は、自由恋愛の範囲内であり、直ちに社会秩序や善良な風俗を害するものではないとされています。
Q3.この判決で別れさせ屋は完全に合法と認められたのですか?
いいえ、「すべての別れさせ工作が合法」と判断されたわけではありません。
あくまで 今回の裁判で争われた方法・内容に限って公序良俗違反ではないと判断されたものです。
脅迫・強要・住居侵入・ストーカー行為などを伴えば、別れさせ屋であっても違法になります。
Q4.既婚者を別れさせる工作も公序良俗に反しないのですか?
いいえ、既婚者が対象の場合は話が異なります。
婚姻関係には貞操義務があり、婚姻関係の破綻を目的とした工作は、公序良俗違反や不法行為と判断される可能性があります。
大阪地裁の判決も、対象者が独身であることを前提に判断されています。
Q5.別れさせ屋への依頼自体は違法ではないのですか?
依頼そのものは違法ではありません。
実際に大阪地裁の判決でも、「別れさせ屋への依頼自体が違法である」という判断は示されていません。
ただし、違法な手段を前提とした契約は無効となり、業者・依頼者双方にリスクが生じます。
Q6.裁判で問題になったのは何が原因だったのですか?
本質的な争点は、
「別れさせ工作が公序良俗に反するため、契約が無効ではないか」
という点でした。
依頼者は成功報酬の支払いを拒否する理由として公序良俗違反を主張しましたが、裁判所はこれを認めませんでした。
Q7.なぜ依頼者は世間から強く非難されたのですか?
依頼者は、
- 事前に内容と料金を理解した上で契約
- 別れさせ工作は実際に成功
という状況にもかかわらず、後から「契約は無効だ」と主張して支払いを拒否しました。
この行為は、飲食後に「気に入らなかったから払わない」と言うのと同じだとして、ネット上でも強く批判されました。
Q8.この裁判から依頼者が学ぶべきポイントは何ですか?
最も重要なのは、
- 公序良俗の判断は裁判所が行う
- イメージや感情で「違法だ」と決めつけても通らない
- 契約内容を理解した上で依頼する責任がある
という点です。
別れさせ屋を利用する場合は、合法な範囲で何を行うのか、契約内容がどうなっているのかを事前に確認することが不可欠です。





